「ペブルビーチゴルフリンクス」は私がキャディをした中でも印象に残っているコースの一つだ。
サンフランシスコの南側150キロほどの場所にカーメル湾を望むモントレー半島という太平洋沿いに突き出した地形を利用して作られたシーサイドコースで、美しい自然に囲まれた景色が広がっている。
この一帯は西海岸の高級リゾート地の一つで、その中に17マイルドライブという国立公園があり、
・「サイプレスポイントクラブ」
・「ザ・リンクスアットスパニッシュベイ」
・「スパイグラスヒルゴルフコース」
などの名門コースが密集している。
このコースは、どのホールも気の抜けないレイアウトになっているのだが、海に面してくる4番から雰囲気が急に変わる。
特に6番から10番まではずっと海沿いの難ホールが続くので、景色こそ綺麗だがどの選手もスコアメイクに苦しむ。
6番のロングホールは右側が断崖絶壁の海に面したホールで、セカンド地点から打ち上げになり、グリーンの面がまったく見えない。
距離的には届くはずなのに2オンを狙っていこうとするとアングルによっては崖を横切るようなショトになるし、なによりボールが着地する場所が見えないからプレーヤーは不安になるのかもしれない。
次の7番ショートホールは打ち下ろしで距離こそ100㍎程しかないのだが、風が吹くと手が付けられない。海から吹き上げる強い向かい風の時には、何番を手渡したら良いのか本当に悩む。以前、師匠のキャディをしていた時には7番アイアンのパンチショットでグリーンを狙っていったこともあった。
そしてホールの右側が全て海沿いになる8番のミドルホールは、あのジャック・ニクラウス選手に「生涯であと一回だけスイングを許されるとしたら、迷わずペブルビーチ8番ホールのセカンドショットを選ぶ」と言わせたほどの絶景が広がる崖越えのセカンドが待っている。
他にも名物ホールはあるけれど、基からあった地形をそのまま残し、自然の木々や景観を損なうことなく調和できているゴルフコースはプレーヤーを視覚的に楽しませる一方で、ゴルフを難しくもする。そして、そういったコースでキャディをしていると、つくづくゴルフというスポーツが自然と一体になっているということに気が付かされる。人工的に作ったコースでは到底真似できないであろう。